防爆って何ですか?

エヌ・シー・エス株式会社のホームページへ 更新:2024.02.04

防爆

さて、あなたが今、可燃性のガス・蒸気・粉塵が存在する空間にいるとしましょう。急にたばこが吸いたくなってしまってうっかりライターに火をつけたら何が起こるでしょう?

もちろん危険です。私はその場に一緒にはいたくありません。今だけでもたばこは我慢してください!

ライターの火というのは非常にイメージしやすい火種ですが、実は携帯電話などの電気製品もライターの火のように、爆発の火種になりえるのです。冬に、パチッとなる静電気、これも火種になります。暗い部屋で電気製品のコンセントを抜いてみると、ぴかっと光っているのが見えると思いますが、これは電気火花です。これも火種になります。高温部分、電気火花、これらが電気製品から発生すると爆発を引き起こす火種になってしまいます。

「防爆」というのは、爆発を引き起こさない、爆発が起こるのを防ぐ、ということです。爆発が起こっても壊れないということではありません。

可燃性のガス・蒸気・粉塵が存在する空間で、普通の電気機器を使用してしまうと、何かの拍子に火種になってしまい、爆発が起こってしまう可能性があるということです。そうならないように、静電気の発生を抑えたり、高温部分が発生しないような特別な工夫を施した電気製品が、防爆電気機器という特別な電気製品です。

どのような工夫があるかについては、専門家による様々な研究や過去事例からの学びを集約した、防爆規格と呼ばれる技術的な文書に示されています。この文書で決められたルールを守っているものであれば、火種にならないことが十分期待できるのです。

エヌ・シー・エス株式会社は、メーカーが作った電気製品が、防爆規格のルールを守っていることを確認する会社です。

注意する点として、防爆電気機器というものは、爆発を防ぐ工夫が施されたものではあるのですが、可燃性のガス・蒸気・粉塵が通常状態で充満しているところで使うことを意図するものではありません。

可燃性のガス・蒸気・粉塵が通常は存在していないけれど、何らかの故障や問題が起きて漏れ出てしまうことがある、そういう状況になったとしても電気製品が防爆電気機器であるならば爆発が起こりにくいよ、ということです。いきなり防爆電気機器に頼るのではなく、危険な環境を作り出さないように努力、工夫して気を付けるのがまず先なのです。

危険な場所

「危険な場所」というと例えば次のような場所があります。

  1. 高所
  2. 水辺
  3. 電気設備
  4. 火薬のある場所
  5. 放射線のある場所
  6. 毒ガスのある場所
  7. 工場
  8. 道路
  9. 地震・火山・津波などの自然災害場所
  10. 犯罪やトラブルが多いエリア

これらの「危険な場所」では、人が注意を払い、安全に行動することが必要になりますが、防爆における危険場所とは、爆発性雰囲気が存在しえる場所、区域を指します。

危険場所の分類と防爆機器

防爆における危険場所は、いくつかに分類することができます。

危険場所の分類は、可燃性のガス、液体、粉塵、ファイバーが存在する、または放出される可能性のある領域を特定し、爆発性雰囲気が発生する頻度に基づいてそれらを特定のゾーンに分類する手続きです。これらのゾーンは、60079シリーズのIEC規格や、北米のNEC(National Electric Code)で定義されています。危険場所は、危険雰囲気の頻度と期間に応じ、ガス、蒸気の場合、Zone 0, Zone 1, Zone 2などに分類されます。以下の表を参照。

この情報は、適切な機器の選択のガイドとなり、これらの環境で安全に設置、操作、および保守されるようにするために使用されます。

危険場所の区分 定義 API RP505による目安:生成時間が1年あたり
Zone 0
Zone 20
爆発性雰囲気が通常の使用状態において、連続して又は長時間にわたって、若しくは頻繁に存在 1,000 時間/を超える
Zone 1
Zone 21
通常の使用状態において、爆発性雰囲気をしばしば生成する可能性がある 10~1,000時間
Zone 2
Zone 22
通常の状態において爆発性雰囲気を生成する可能性が小さく、また生成した場合でも短時間しか持続しない 1~10時間未満

※API RP505=アメリカ石油協会の規格。時間は、あくまでも目安であり、定義ではありません。

危険場所の分類は、危険物の種類、その濃度、および放出の可能性によって異なります。危険場所で使用される機器は、特別仕様の製品(防爆機器)であり、使用される特定のZoneの適切な基準を満たすように設計、試験、そして、認証されたものである必要があります。

防爆電気機器の例

  1. 防爆モーター
  2. 防爆変圧器
  3. 防爆スイッチ(電気回路を開閉するための装置)
  4. 防爆照明器具
  5. 防爆制御盤(電気機器の制御や監視を行う装置)
  6. 防爆プラグ・ソケット
  7. 防爆接続箱(電気配線を接続するための箱)
  8. 防爆温度センサー
  9. 防爆ソレノイドバルブ(電気信号によって流体の流れを制御する装置)
  10. 防爆カメラ
  11. 防爆通信機器
  12. 防爆スマホ

防爆構造の種類

防爆構造には以下のような種類があります。

  1. 耐圧防爆構造

  2. 内圧防爆構造

  3. 油入防爆構造

  4. 安全増防爆構造

  5. 本質安全防爆構造

  6. 樹脂充塡防爆構造

  7. 非点火防爆構造

  8. 容器による粉じん防爆構造

防爆構造には、爆発性雰囲気の存在する場所や使用目的に応じて、適切なものを選択する必要があります。

耐圧防爆構造

容器が、その内部に侵入した爆発性雰囲気の内部爆発に対して、損傷を受けることなく耐え、かつ、容器のすべての接合部又は構造上の開口部を通して外部の爆発性雰囲気へ発火を生じることのない電気機器の防爆構造

内圧防爆構造

容器内の保護ガスの圧力を外部の雰囲気の圧力より高く 保持することによって、又は容器内の爆発性ガスの濃度を爆発下限界より十分に低いレベルに希釈することによって、 防爆性能を確保する電気機器の防爆構造

油入防爆構造

電気機器及び電気機器の部分を油に浸す構造であり、さらに油の上、又は容器の外部に存在する爆発性雰囲気へ発火を生じることがない電気機器の防爆構造

安全増防爆構造

通常の使用中にはアーク又は火花を発生することのない電気機器に適用する防爆構造であって、過度な温度の可能性並びに異常なアーク及び火花の発生の可能性に対して安全性を増加する手段が講じられた電気機器の防爆構造

本質安全防爆構造

通常の状態及び仮定した故障状態において、電気回路に発生する電気火花及び高温部が規定された試験条件で所定の試験ガスが発火しないようにした防爆構造

樹脂充塡防爆構造

電気機械器具を構成する部分であって、火花若しくはアークを発し、又は高温となって点火源となるおそれがあるものを樹脂の中に囲むことにより、ガス又は蒸気に点火しないようにした構造をいう。

非点火防爆構造

電気機器に適用する防爆構造で、正常な運転中には周囲の爆発性雰囲気を発火するおそれがなく、また、発火を生じる故障を起こす可能性の少ない構造をいう

容器による粉じん防爆構造

以下の二つの組み合わせ
(1) 点火源となりうる部分を粉じんの侵入を防ぐ容器に入れることにより点火を抑制する
(2) 容器の表面温度を制限することにより点火を抑制する

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