防爆 検定 NCS エヌ・シー・エス
「型式ごと」の申請

~ 一つの検定合格証に含めることのできる範囲について ~

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2024.09.19

「型式ごと」の申請とは

まず初めに

防爆構造電気機械器具の型式検定は「型式ごと」に申請するものであることが、機械等検定規則により定められています。ここでの「型式ごと」とは何を意味するのかについては、下記で紹介する厚生労働省通達により定められています。

申請が「型式ごと」に行う必要があることから、1つの検定合格証に含めることができる「型式の範囲」には制約があります。
電気用品安全法に基づく適合性検査(PSEマーク関係)においても、「型式の区分」に関する制約があります。これと類似の制約であると考えてよいでしょう。

参考知識として:IECEx認証システムにおいては、その運用文書「IECEx OD 034」において指針が示されており、series/rangeの単位での認証という形が認められていますが、1つの認証証に含めることができる範囲は、日本の型式検定とは大きく異なります。日本独特の「型式ごと」制約があるため、IECEx認証品を国内検定に申請する場合は、以下のように複数の検定合格証に分ける必要がある場合もありますので、申請の前に十分な検討が必要です。

OD 034のsection 4には以下の記述があり、

" ideal situation is a one-to one correspondence between each discrete design of equipment and its certificate, that is, one certificate covering one product type"

IECExシステムにおいても、日本の型式検定のような、型式ごとの申請が理想的であると書かれています。実は、EUの機械指令でも、日本の型式検定の「型式ごと」申請と似たような制約があります。機械指令の公式ガイド文書の section 396 を参照。[Guide to application of the Machinery Directive 2006/42/EC]

「型式ごと」の申請とは

機械等検定規則

機械等検定規則の第六条(新規検定の申請等)

1 (労働安全衛生法)法第四十四条の二第一項又は第二項の規定による検定(以下「型式検定」という。)であつて新規のもの(以下「新規検定」という。)を受けようとする者は、当該新規検定を受けようとする型式ごとに、新規検定申請書様式第六号に次の図面及び書面を添えて、型式検定を行う者(以下「型式検定実施者」という。)に提出しなければならない。

2 新規検定を受けようとする者のうち、当該型式の機械等を輸入し、又は外国において製造したものは、前項の申請書に当該機械等の構造が法第四十二条の厚生労働大臣が定める規格に適合していることを厚生労働大臣が指定する者(外国に住所を有するものに限る。)が明らかにする書面を添付することができる。この場合において当該書面が添付されたときは、前項の規定にかかわらず同項第四号の書面の提出を省略することができる。

3 新規検定を受けようとする者は、第一項に規定するもののほか、別表第一の上欄に掲げる機械等の種類に応じて、それぞれ、同表の中欄に定める現品その他新規検定を受けるために必要なものについて同表の下欄に定める数を型式検定実施者に提出しなければならない。

4 第一項の規定による申請をした者(以下「新規検定申請者」という。)は、新規検定を受けるために必要な準備をしなければならない。

厚生労働省通達

下記の通達において、機械等検定規則の第六条でいうところの「型式ごと」について補足がなされています。

関連する法令等 「型式ごと」に関する主な内容
機械等検定規則 ※第六条参照
基発第80号(昭和53年2月10日) 「型式ごと」の解釈について 別紙3(防爆構造電気機械器具の型式の区分について)
Ⅱ 細部事項の2の(2)
基発1005第3号(平成22年10月5日) 「型式ごと」の解釈について 基発第80号通達を改正(追加)
1の(1)
基発0328(平成30年3月28日) 基発第 80 号(昭和53年2月10日)の別紙3(防爆構造電気機械器具の型式の区分について)を更新している
基発0812(令和3年8月12日) 基発第 80 号(昭和53年2月10日)の別紙3(防爆構造電気機械器具の型式の区分について)を更新している

※上記の文書は、一度は目を通されることをお勧めします。リンク切れがあった場合は、google等で、「基発第80号 検定」等のキーワードで検索しても見つけられると思います。

※「別紙2」は重要ですのでご参照ください。

No. 項目 補足 結論
[1] 別紙2に規定されている「要素」「区分」の組み合わせが同じ これが満たされないものは別申請
[2] 機器の主要部分の形状が同じ (例) 耐圧防爆容器の形状 これが満たされないものは別申請
[3] 機器の安全性能に関する部分の仕様が同じ (例)本質安全防爆の安全保持部品の仕様 これが満たされないものは別申請
[4] 機器の安全性能に関係する部分に用いる材料が同じ これが満たされないものは別申請
[5] 機器の冷却に関する条件が同じ これが満たされないものは別申請

[1] の別紙2に列挙された事項は簡単に判断できますが、その他については、防爆構造の詳細や設計のコンセプトを理解する必要があり簡単には判断できないことが多いの実情です。

具体的な申請に際しご不明な点がございましたらご相談ください。

"Rule of thumb"

供試品とは別に試験を実施する必要があるようなもの ➡ 同一型式とはみなされない。

同じ申請(一つの合格証に含める)として扱えるかどうかは、申請前に分析して頂く必要があります。

【ステップ1】検定を取得したい型式の範囲を決定する
【ステップ2】供試品を選定する
【ステップ3】それぞれの供試品と同じ仲間に属するとみなせるものはどれであるかを整理する
【ステップ4】申請書類を作成する(申請書、図面、試験データ、その他)

「型式ごと」の解説

厚生労働省通達、基発0812(2021年08月12日)の別紙2 「防爆構造電気機械器具の型式の区分について」を見ながら読んでください。

  1. 「型式ごと」の基本的な構成:

    • 供試品
    • 「同一型式」と認められる製品
  2. 「同一型式」の判断基準:
    a. 基本条件:

    b. 除外条件:

    • (防爆構造を構成する)主要部分の形状が同一でない場合
    • 防爆性能に関係する部分の仕様が同一でない場合
    • (防爆構造を構成する)容器の形状が異なる場合
    • 防爆性能に関係する部分に用いる材料が異なる場合
    • 冷却に関する条件が異なる場合

つまり、「型式ごと」とは、供試品、および、その供試品と同一と認められる型式(「同一型式」)の集合を指します。同一型式と認められるためには、基本条件を満たし、かつ除外条件に該当しないことが必要です。

更新検定に関して

更新検定に関する基礎的事項については、更新検定について(NCSウェブサイト)をご参照ください。

更新検定では、変更機種を追加することができますが、合格証の供試品(代表機種)と同一の型式とみなせるものに限られます。それ以外については、新規検定を受けることになります。

同一型式の理由書について(=「型式ごと」の申請の理由説明)

申請に際して、供試品以外の型式を申請の範囲に含める場合、それらの全てが、供試品と防爆性能が同一であることを説明する「同一型式の理由書」を提出していただきます。同一型式とみなせないものは、申請から除外、または、別途申請していただくことになります。

作成時の留意点として

  1. 同一型式と認められるかどうかは検定の審査により判定されます。
  2. 供試品と比較して、同一型式品と考えられる技術的な根拠を説明してください。一般的な説明の仕方としては、供試品と同一型式品(候補)の相違点を明確にし、それぞれの相違点ごとに、同一型式品(候補)の防爆性能が供試品と同等以上である理由を説明するものです。
  3. IECEx認証では、適合と確認できたものであれば一つの認証証に記載することが運用として認められていますが、日本の検定では型式ごとの申請という異なる運用が定められていますので、IECEx認証証に記載されている型式を日本の申請における同一型式として認められるかどうかは個別の分析と判断が必要となります。

「同一型式の理由書」は、審査担当者が申請内容を理解するための補足資料として用いられます。そのため、この文書の形式は特に指定しておりません。写真や手書きの図、図面の貼り付けなども利用して説明していただけると役立ちます。詳細が不足している場合、お問い合わせをさせていただくこともあります。情報を明瞭に整理し、分かりやすく提供していただくと、審査を迅速に進めることができ、早期の検定合格証の発行にも繋がります。

判定の例

図面や試験の詳細を分析してからでないと判定できないような場合もありますが、以下は直ぐに判定できる例です。

供試品 「同一型式品」候補 同一型式品と認められるか? 理由
Ex db IIB T5 Gbの温度計 Ex db IIB T6 Gbの温度計 No 温度等級が異なる
Ex db IIB T5 Gbの温度計 Ex db IIC T5 Gbの温度計 No ガスグループが異なる
Ex db IIB T5 Gbの温度計 Ex eb IIB T5 Gbの温度計 No 防爆構造が異なる
Ex db eb IIB T5 Gbの温度計 Ex db IIB T5 Gbの温度計 No 防爆構造の組合せが異なる
Ex ib IIB T5 Gbの温度計 Ex ib IIIB T100℃ Dbの温度計 No 機器グループ、EPLが事なる
Ex db IIB T5 Gbの温度計 Ex db IIB T5 Gbの圧力計 No 機器の種類が異なる
Ex db IIB T5 Gbの圧力計 ※容器材質=SUS316 Ex db IIB T5 Gbの圧力計 ※容器材質=ADC12 No 安全性能に関する部分の材質が異なる
Ex db IIB T5 Gbの圧力計 ※締付けねじの材質=SUS304 Ex db IIB T5 Gbの圧力計 ※締付けねじの材質=SCM435H No 安全性能に関する部分の材質が異なる
内容積が350cm3のEx db IIB T5 Gbの振動センサー 内容積が580cm3のEx db IIB T5 Gbの振動センサー No 安全性能に関する部分の仕様が異なる ※それぞれ別々に爆発試験等が必要

※ 例は随時追加していきます。


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