MESGとガス、および粉塵:科学的観点
2023.06.27| NCSホームページ
目次
目次終わり
IEC 60079-20は、Maximum Experimental Safe Gap (MESG)もしくは、Minimum Igniting Current (MIC)を使うことにより可燃性ガスをgas group, I, IIA, IIB, IICに分類している。
IEC 60079-1:2014のclause 3.7において以下のようなMESGの定義がある:
xxxxxxxxxx
maximum gap of a joint of 25 mm in width which prevents any transmission of an explosion during 10 tests made under the conditions specified in IEC 60079-20-1
25mmの奥行きの接合面において、IEC 60079-20-1 に定める条件下で 10 回の爆発引火試験を行ったときに、1度も引火しない最大すきまである。
MESGの値は、対象ガスの特性を指標化したものと考えることができる。正確なことを言うと、MESGを決定するのに使用する容器の構造にも依存する。実際に、アメリカ式のMESGとIEC式のMESGでは値が異なる。MESGという言葉が出てきたら、どの容器でのMESGですか?と訊かなければならないですね。
MESGの値とは、ある容器において、ある条件下で、内部容器のgapを変化させていき、内部の引火が外部に伝搬するか否かによって決められるgapの最大の値である。上記のIEC規格では、以下のような試験装置を使用している。
<IEC 60079-20-1:2010より引用>
試験装置設置場所の周囲温度
試験装置内の気圧
試験に使用する混合ガスの濃度
試験混合ガスを作る際に使用する空気の湿度
点火用の火花発生電極の配置の仕方
点火用の火花発生電極に発生させる電圧は約15kV
試験装置のメインの容器を構成する材質はステンレス
試験装置が満たすべき条件として、1500kPaの圧力がかかったとしても、爆発発生時に試験gapの寸法には有意な変化が起きないこと。
試験装置における内部容器(この中の混合ガスに点火)の形状は、20 cm
内部容器のガスinlet, outletにはフレームアレスターを取り付け
試験装置における外部容器の形状は円柱で直径が200mmで高さは75mm
内部容器のflamepathはlengthが25mmのflangeタイプで、gapの値が可変である。
gapの値は0.02mm刻みで変えていきながらそれぞれで測定
予備試験にて
確認試験にて
平面接合部の平面性の詳細寸法が与える影響は大きいので考慮しなければならないところであるが、厳密には定義されていない。
IECによるgas groupとMESGの関係について
Gas group | Gas MESG (mm) | ガスの例 |
---|---|---|
IIC | MESG | アセチレン(C2H2), 水素(H2) |
IIB | 0.5<MESG < 0.9 | エチレン(C2H4) |
IIA | 0.9 | プロパン(C3H8) |
National Electrical Code(NEC)によるClass I Groupとgas MESGの関係について
NEC Class I Group | Gas MESG (mm) | ガスの例 |
---|---|---|
Group A | (アセチレンのMESG) | アセチレン(C2H2) [Group Aの唯一のガス] |
Group B | MESG | 水素(H2) |
Group C | 0.45 < MESG | エチレン(C2H4) |
Group D | 0.75 < MESG | プロパン(C3H8) |
ガス名 | 発火点(℃) | 火炎温度(℃) | 燃焼速度(m/s) | 燃焼濃度範囲(%) | 比重 |
---|---|---|---|---|---|
空気 | ー | ー | ー | ー | 1 |
アセチレン | 305 | 3330 | 7.60 | 2.5 to 81.0 | 0.9073 |
エチレン | 450 | 3000 | 5.43 | 3.1 to 32.0 | 0.975 |
プロパン | 432 | 2600 | 0.43 [空気中] 3.9 [酸素中] | 2.2 to 9.5 | 1.52 |
メタン | 537 | 2780 | 0.4 [空気中] 3.9 [酸素中] | 5.0 to 15.0 | 0.55 |
水素 | 527 [空気中] 450 [酸素中] | 2045 [空気中] 2660 [酸素中] | 90 [70%水素] 1400 to 3500 [爆鳴気] | 4.0 to 94.0 | 0.0695 |
物質を空気中で加熱するとき、点火源なしで発火する最低温度を発火点という。
発火点、火炎温度、燃焼速度、燃焼範囲などは、測定方法、測定時にコントロールできていない条件等により異なる値を出すため、上記の表の値は目安としてとらえる方が良いだろう。測定の不確かさが記載されていないことに気が付くべきである。比重の値については、ある程度再現性のある値と考えてよい。
グループⅢの細分類 (日本国内:基発0812 第5号 令和3年8月 12 日)
区分 | 防爆機器を使用しようとする場所における粉じんの性質 |
---|---|
グループIIIA | 繊維を含む可燃性の固体粒子であって公称粒子径が 500μm を超えるものをいい、空気中に浮遊することがあり、自重によって大気から分離して堆積することがあるもの |
グループIIIB | 可燃性粉じん※であって、電気抵抗率が1,000Ω・m を超えるもの |
グループIIIC | 可燃性粉じん※であって、電気抵抗率が1,000Ω・m 以下のもの |
※ 微細固体粒子であって公称粒子径が 500μm 以下のものであり、大気中に浮遊するか、自重により大気から分離して堆積するもので、空気中で燃焼又は白熱し、大気圧・常温において空気との爆発性混合物を形成することがあるもの。
【履歴】
2023.06.27 粉塵の区分追加
2023.06.18 ページタイトル変更
2023.02.08 編集上の文章の修正
2020.02.11 初版