防爆 検定 NCS エヌ・シー・エス
同一型式追加事項明細書について

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2024.09.19

「同一型式追加事項明細書」には何を書くべきか?

更新検定における繰上げ更新では、「同一型式」の追加が可能です。「同一型式」の定義と判断基準については、以下の当社ウェブサイトに詳細な解説を掲載しています。

「型式ごと」の申請

繰上げ更新時に「同一型式」を追加する場合、申請者には「同一型式追加事項明細書」の提出が必要となります。この書類は、追加しようとする型式が「同一型式」とみなせる根拠を説明するものです。

「同一型式追加事項明細書」には、以下の内容を含めてください:

  1. 追加予定の型式の詳細説明 (必要な場合、追加する図面を用いて説明)
  2. 「同一型式」と判断できる理由の論理的な説明

更新検定の審査では、提出された「同一型式追加事項明細書」に基づいて評価を行います。

同一型式追加事項明細書の例(イメージ)

おことわり:以下は、あくまでもどのような内容、項目を書けばよいかのイメージを示すための例であり、このように判定するということを示したものではなりません。

例1:耐圧防爆構造の機器

NC100yyy: 2版の更新申請において追加しようとする型式について説明します。

項目 供試品(GP-100) 同一型式候補(GP-100S) 備考
製品名 防爆構造圧力計 GP-100シリーズ 防爆構造圧力計 GP-100シリーズ 変更なし
用途 危険場所における圧力測定 危険場所における圧力測定 変更なし
防爆構造 耐圧防爆構造 Ex db IIC T6 耐圧防爆構造 Ex db IIC T6 変更なし
測定範囲 0〜1 MPa 0〜1 MPa 変更なし
精度 ±1.0% F.S. ±0.5% F.S. 内部機構改良により向上
接続部 R1/2 R1/2 変更なし
本体材質 SUS316 SUS316 変更なし
ケース径 100 mm 100 mm 変更なし
窓材質 強化ガラス(厚さ 5 mm) 強化ガラス(厚さ 5 mm) 変更なし
内部容積 250 cm³ 250 cm³ 変更なし
耐圧接合面 ねじ接合(M60x2) ねじ接合(M60x2) 変更なし
隔壁厚さ 2.5 mm 2.5 mm 変更なし
使用温度範囲 -20℃〜+60℃ -20℃〜+60℃ 変更なし
消費電力 2.5 W 2.0 W 省電力設計により低減

【同一型式と判断できる理由】

  1. 基本構造(本体、窓、耐圧接合面等、寸法、材質)、内部容積、主要部品の配置に変更がなく、爆発基準圧試験と爆発引火試験に影響を与えないこと。したがって、過圧試験にも影響を与えない。

  2. 消費電力は減少しており、温度等級は等しいと考えられる。

【変更点の詳細説明】

  1. 精度向上:内部機構の微調整により、測定精度を±1.0% F.S.から±0.5% F.S.に向上させました。この調整は内部容積や部品配置に影響を与えないものです。

  2. 消費電力低減:省電力設計の採用により、消費電力を2.5 Wから2.0 Wに低減しました。この変更は内部発熱量の減少につながり、温度上昇の観点からより安全側に働きます。また、この変更は内部構造や容積に影響を与えないため、防爆性能には影響しません。

これらの変更は、内部容積、主要部品の配置、自由空間に影響を与えないため、爆発基準圧試験や爆発引火試験の結果に影響しません。

例2:本質安全防爆構造の機器

IS200xxx: 3版の更新申請において追加しようとする型式について説明します。

項目 供試品(IS-2000) 同一型式候補(IS-2000A) 備考
製品名 本質安全防爆構造ガス検知器 IS-2000シリーズ 本質安全防爆構造ガス検知器 IS-2000シリーズ 変更なし
用途 危険場所におけるガス濃度測定 危険場所におけるガス濃度測定 変更なし
防爆構造 本質安全防爆構造 Ex ia IIC T4 Ga 本質安全防爆構造 Ex ia IIC T4 Ga 変更なし
測定対象ガス 可燃性ガス 可燃性ガス 変更なし
測定範囲 0〜100% LEL 0〜100% LEL 変更なし
精度 ±3% LEL ±3% LEL 変更なし
表示方式 LCD デジタル表示 LCD デジタル表示 変更なし
筐体材質 難燃性ABS樹脂 難燃性ABS樹脂 変更なし
重量 約350g(電池含む) 約350g(電池含む) 変更なし
外形寸法 70(W) x 150(H) x 40(D) mm 70(W) x 150(H) x 40(D) mm 変更なし
使用温度範囲 -20℃〜+50℃ -20℃〜+50℃ 変更なし
電源 リチウムイオン電池 型番:BT-2000 リチウムイオン電池 型番:BT-2000A 電池追加
連続使用時間 約20時間 約20時間 変更なし

【同一型式と判断できる理由】

  1. 基本構造(筐体、回路)に変更がないこと
  2. 使用温度範囲に変更がないこと
  3. 追加する電池は、同じタイプであり、また、本安規格10.5の適合性評価内容が供試品と同等であること

【変更点の詳細説明】

電池の追加:
既存の電池(BT-2000)に加えて、新たに電池(BT-2000A)を使用可能としました。BT-2000AはBT-2000と同等の電気的特性を持つリチウムイオン電池です。以下に両電池の比較を示します:

項目 BT-2000 BT-2000A
電池種類 リチウムイオン リチウムイオン
公称電圧 3.7V 3.7V
容量 2000mAh 2100mAh
最大充電電圧 4.2V 4.2V
最大充電電流 1A 1A
最大放電電流 2A 2A
内部抵抗 100mΩ以下 95mΩ以下
保護回路 過充電、過放電、過電流保護 過充電、過放電、過電流保護

【本質安全性への影響評価】

  1. 電圧特性:
    BT-2000AはBT-2000と同じ公称電圧(3.7V)および最大充電電圧(4.2V)を持つため、回路への供給電圧に変更はありません。これにより、本質安全回路の電圧制限値を超えることはありません。

  2. 電流特性:
    BT-2000Aの最大充電電流および最大放電電流はBT-2000と同等であるため、回路に流れる最大電流に変更はありません。これにより、本質安全回路の電流制限値を超えることはありません。

  3. 内部抵抗:
    BT-2000Aの内部抵抗はBT-2000とほぼ同等(わずかに低い)です。実際には、本質安全性の評価において、セル又はバッテリの内部抵抗は考慮せずに行われているため、適合性に影響は有りません。

  4. 容量:
    BT-2000Aの容量がわずかに大きいですが(2100mAh vs 2000mAh)、これは使用時間にのみ影響し、本安性能には影響しません。

結論:
BT-2000AはBT-2000と電気的特性がほぼ同等であり、本質安全防爆構造の要件を満たしています。そのため、この電池の追加は製品の本質安全性に影響を与えず、同一型式として認められると判断できます。


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